『奥様は軍師:番外編〜君と夜明けのコーヒーを』







「いいか、おまえら」
 去り際に、夏侯元譲は、二人に向かって厳然と、申し渡した。
「俺はこれから、久しぶりにゆっくり朝寝をするつもりだから」
 ――俺の安眠を、妨害するな。
「判ったな?」



 …などと、釘を刺されようとも。
 旦那様には、馬耳東風。
 張文遠という男…
 ヒトの話はまったく聞かないことで(一部では)有名な人物だった。
「……!?」
 ついこの間、夏のボーナスで何を買うかを一晩討議した結果、ベッドではなくて二人掛けのソファになったのは、旦那様の夜を徹しての説得が功を奏したからであった。
「続きを、どうだろうかね?」
 ソファに、足を投げ出して座り、その膝の上に奥様を載せた旦那様は、満面の笑みで、問う。
「悪ふざけも…」
「四六時中でも、していたい」
「離婚する!
 あなたのようなひととは、付き合いきれぬ」
「そう大声を出すと、夏侯室長の安眠妨害にならないかね?」
「……悪党」



 にゃぁん。
 とことこ、と…
 三匹仲良くソファの下に居並び、この世で最も頼りになるご主人様に、朝ごはんの、おねだり。
「あんたも何か、食べるかね?」
「…わたしは猫と同列か」
「猫は食べられないが、あんたは食べられる、と云う点で、あんたのほうが猫より上だ」
「文遠!」
 


 君と夜明けのコーヒーを。



 壁の向こうには…
 眠れない、隣人。





That's all over.


||モドル|| 『滔天廻路:上演作品目録』|| ススム||
製作年月日:2005/08/16
文責:市川春猫